今年の3冊(2014年)

9.11直後のニューヨークを舞台にした小説『ザ・ゼロ』で始まり、ジェイコブスの(ニューヨーク論とでもいうべき)都市論の古典『アメリカ大都市の死と生』で終わった一年。ふりかえってみると、なぜかニューヨークづいてたな。

□今年読んだ本(読んだ順番で)
『ザ・ゼロ』ジェス・ウォルター
『言語都市』チャイナ・ミエヴィル
『夢幻諸島から』クリストファー・プリースト
『殺人犯はそこにいる』清水潔
『写字室の旅』ポール・オースター
『世界を回せ』(上・下)コラム・マッキャン
『サードプレイス』レイ・オルデンバー
『スミヤキストQの冒険』倉橋由美子
『新版 カウンセリングの話』平木典子
『セラピスト』最相葉月
『研修開発入門』中原淳
『ワークショップ・デザイン論』山内祐平、森玲奈、安斎勇樹
『デス博士の島その他の物語』ジーン・ウルフ
『第三の警官』ティム・オブライエン
『第四の館』R・A・ラファティ
『ケルベロス第五の首』ジーン・ウルフ
『モンスター 尼崎連続殺人事件の真実』一橋文哉
『NOS4A2』ジョー・ヒル
『第七階層からの眺め』ケヴィン・ブロックマイヤー
『回想のビュイック8』スティーヴン・キング
『モンド9』ダリオ・トナーニ
『限りなき夏』クリストファー・プリースト
『首都ブラジリア』中岡義介、川西尋子
『日本の都市から学ぶこと』バリー・シェルトン
『東京断想』マニュエル・タルディッツ
『狙われた女』ジャック・ケッチャムリチャード・レイモンエドワード・リー
閉店時間ジャック・ケッチャム
『吸血鬼ドラキュラ』ブラム・ストーカー
フランケンシュタイン』メアリー・シェリ
屍者の帝国伊藤計劃円城塔
『制御と社会』北野圭介
『モンスターズ』B・J・ホラーズ・編
関東大震災の想像力』ジェニファー・ワイゼンフェルド
『イメージ、それでもなお』ジョルジュ・ディディ=ユベルマン
『カタストロフィと人文学』西山雄二・編
『なぜ「小三治」の落語は面白いのか?』広瀬和生
『テクニウム』ケヴィン・ケリー
『テクノロジーイノベーション』W・ブライアン・アーサー
『ナノハイプ狂騒』(上・下)D・M・ベルーベ
『ゴースト・スナイパー』ジェフリー・ディーヴァー
『牡蠣と紐育』マーク・カーランスキー
アメリカ大都市の死と生』ジェイン・ジェイコブス


【フィクション部門】

■『ザ・ゼロ』ジェス・ウォルター
 9.11以来、ツインタワーから舞い散る紙片のように断片化していく主人公の日常。「9.11」があたかもマクガフィンのように描かれていて印象的でした。オースターのニューヨーク三部作、ノーランの「メメント」などが好きな人にはぜひお勧めしたい作品です。

ザ・ゼロ

ザ・ゼロ

■『夢幻諸島から』、『限りなき夏』クリストファー・プリースト
 地球に似た架空の世界の赤道付近に点在する無数の島を舞台とした連作短編シリーズ<ドリーム・アーキペラゴ>。地理的にも時間的にも連続しているようで断絶している(断絶しているようで連続している)「群島」という舞台は、プリーストの魔術的物語にぴったりの舞台設定ですね。そんなライフワーク的シリーズが一冊にまとまった(といっても、大半が書き下ろし)『夢幻諸島から』とシリーズ三編を収録した『限りなき夏』を選びました。

限りなき夏 (未来の文学)

限りなき夏 (未来の文学)

■『モンスターズ』B・J・ホラーズ・編
 モンスターをテーマにしたアンソロジー。収録作品はどれも「恐さ」だけじゃない「ひと捻り」が加わった秀作ぞろいです。日本版オリジナルの並び順も(原書ではタイトルのアルファベット順)もよく練られていて好き。書店で見かけた方は、巻末に収録された「モスマン」だけでもぜひ読んで!

モンスターズ: 現代アメリカ傑作短篇集

モンスターズ: 現代アメリカ傑作短篇集


【ノンフィクション部門】

■『関東大震災の想像力』ジェニファー・ワイゼンフェルド
 関東大震災というカタストロフィを通じて、当時の「視覚文化」を再構成しようという意欲作。ぼく自身、「視覚論」の知識がほとんどないこともあって「(東京)都市論」的に読んでしまったところもありますが、それでも無類の面白さ。まるで展覧会をじっくり見物するような読書体験を堪能しました。

関東大震災の想像力: 災害と復興の視覚文化論

関東大震災の想像力: 災害と復興の視覚文化論

■『テクニウム』ケヴィン・ケリー
 「WIRED」誌のカリスマ編集長ケヴィン・ケリーによる技術論。生物の「進化」に基づいて、あらためて「技術とは何か?」を問い直そうという壮大な試みです。ブラックモアの『ミーム・マシーンとしての私』が『利己的な遺伝子』の系譜だとすると、この『テクニウム』は『延長された表現型』の子孫ともいえそう。

テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?

テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?

■『アメリカ大都市の死と生』ジェイン・ジェイコブス
 「今年の3冊」にはなるべく新刊を入れるように意識しているのですが、これはどうしても入れてしまいました。都市の権威者によるマスタープランが、実はただのマスターベーションに過ぎないというボトムからの告発。都市論として秀逸なことはいまさらぼくが紹介する必要もありませんが、本書はジェイコブスの舌鋒鋭い語り口がもうひとつの魅力だと思います。彼女にかかると、コルビジエも「中二病」に見えてくるw

アメリカ大都市の死と生

アメリカ大都市の死と生


以上、こうやって書き出してみると後半からノンフィクションの割合が増えてきていますね。毎年恒例の年末のミステリ・ランキングのフォローもやってないし・・・まあ、そんなこと気にしないで、来年も読みたいときに読みたい本を読んでいこうと思います。楽しいのが一番。

※過去の三冊はこちらでご紹介しています。 2013年。 2012年。 2011年。