万国島巡り

『海を照らす光』は、「夫婦の物語」であると同時に「島の物語」でもありました。というわけで、島の本を何冊か。『狗賓童子の島』から『黄金時代』の連携はギャップ激しかったわ〜w

■『海を照らす光』M・L・ステッドマン 

海を照らす光

海を照らす光

■『狗賓童子の島』飯嶋和一

狗賓(ぐひん)童子の島

狗賓(ぐひん)童子の島

■『黄金時代』ミハイル・アイヴァス

黄金時代

黄金時代

夫婦善哉

夫婦の物語を三冊ほど読み継ぎました。そうえいば、三組とも<子どもが不在の夫婦(DINKS?じゃないねw)>の物語だったなあ。

そんなこと書いていたら、以前も夫婦もの読み継いだの思い出しました。フリン『ゴーン・ガール』、ロス『ミスター・ピーナッツ』、キング『1922』・・・この三冊は、いわば<「妻殺し」の夢を見る夫たち>シリーズとでもいえそう(苦笑)

うちも来月で結婚15年なんですけど、夫婦生活ってどこも大変なんだなあ、ということがわかって勇気づけられる読書でした。


■『わたしはサムじゃない』ジャック・ケッチャム、ラッキー・マッギー

■『リーシーの物語』スティーヴン・キング


■『海を照らす光』M・L・ステッドマン

海を照らす光

海を照らす光

今年の3冊(2014年)

9.11直後のニューヨークを舞台にした小説『ザ・ゼロ』で始まり、ジェイコブスの(ニューヨーク論とでもいうべき)都市論の古典『アメリカ大都市の死と生』で終わった一年。ふりかえってみると、なぜかニューヨークづいてたな。

□今年読んだ本(読んだ順番で)
『ザ・ゼロ』ジェス・ウォルター
『言語都市』チャイナ・ミエヴィル
『夢幻諸島から』クリストファー・プリースト
『殺人犯はそこにいる』清水潔
『写字室の旅』ポール・オースター
『世界を回せ』(上・下)コラム・マッキャン
『サードプレイス』レイ・オルデンバー
『スミヤキストQの冒険』倉橋由美子
『新版 カウンセリングの話』平木典子
『セラピスト』最相葉月
『研修開発入門』中原淳
『ワークショップ・デザイン論』山内祐平、森玲奈、安斎勇樹
『デス博士の島その他の物語』ジーン・ウルフ
『第三の警官』ティム・オブライエン
『第四の館』R・A・ラファティ
『ケルベロス第五の首』ジーン・ウルフ
『モンスター 尼崎連続殺人事件の真実』一橋文哉
『NOS4A2』ジョー・ヒル
『第七階層からの眺め』ケヴィン・ブロックマイヤー
『回想のビュイック8』スティーヴン・キング
『モンド9』ダリオ・トナーニ
『限りなき夏』クリストファー・プリースト
『首都ブラジリア』中岡義介、川西尋子
『日本の都市から学ぶこと』バリー・シェルトン
『東京断想』マニュエル・タルディッツ
『狙われた女』ジャック・ケッチャムリチャード・レイモンエドワード・リー
閉店時間ジャック・ケッチャム
『吸血鬼ドラキュラ』ブラム・ストーカー
フランケンシュタイン』メアリー・シェリ
屍者の帝国伊藤計劃円城塔
『制御と社会』北野圭介
『モンスターズ』B・J・ホラーズ・編
関東大震災の想像力』ジェニファー・ワイゼンフェルド
『イメージ、それでもなお』ジョルジュ・ディディ=ユベルマン
『カタストロフィと人文学』西山雄二・編
『なぜ「小三治」の落語は面白いのか?』広瀬和生
『テクニウム』ケヴィン・ケリー
『テクノロジーイノベーション』W・ブライアン・アーサー
『ナノハイプ狂騒』(上・下)D・M・ベルーベ
『ゴースト・スナイパー』ジェフリー・ディーヴァー
『牡蠣と紐育』マーク・カーランスキー
アメリカ大都市の死と生』ジェイン・ジェイコブス


【フィクション部門】

■『ザ・ゼロ』ジェス・ウォルター
 9.11以来、ツインタワーから舞い散る紙片のように断片化していく主人公の日常。「9.11」があたかもマクガフィンのように描かれていて印象的でした。オースターのニューヨーク三部作、ノーランの「メメント」などが好きな人にはぜひお勧めしたい作品です。

ザ・ゼロ

ザ・ゼロ

■『夢幻諸島から』、『限りなき夏』クリストファー・プリースト
 地球に似た架空の世界の赤道付近に点在する無数の島を舞台とした連作短編シリーズ<ドリーム・アーキペラゴ>。地理的にも時間的にも連続しているようで断絶している(断絶しているようで連続している)「群島」という舞台は、プリーストの魔術的物語にぴったりの舞台設定ですね。そんなライフワーク的シリーズが一冊にまとまった(といっても、大半が書き下ろし)『夢幻諸島から』とシリーズ三編を収録した『限りなき夏』を選びました。

限りなき夏 (未来の文学)

限りなき夏 (未来の文学)

■『モンスターズ』B・J・ホラーズ・編
 モンスターをテーマにしたアンソロジー。収録作品はどれも「恐さ」だけじゃない「ひと捻り」が加わった秀作ぞろいです。日本版オリジナルの並び順も(原書ではタイトルのアルファベット順)もよく練られていて好き。書店で見かけた方は、巻末に収録された「モスマン」だけでもぜひ読んで!

モンスターズ: 現代アメリカ傑作短篇集

モンスターズ: 現代アメリカ傑作短篇集


【ノンフィクション部門】

■『関東大震災の想像力』ジェニファー・ワイゼンフェルド
 関東大震災というカタストロフィを通じて、当時の「視覚文化」を再構成しようという意欲作。ぼく自身、「視覚論」の知識がほとんどないこともあって「(東京)都市論」的に読んでしまったところもありますが、それでも無類の面白さ。まるで展覧会をじっくり見物するような読書体験を堪能しました。

関東大震災の想像力: 災害と復興の視覚文化論

関東大震災の想像力: 災害と復興の視覚文化論

■『テクニウム』ケヴィン・ケリー
 「WIRED」誌のカリスマ編集長ケヴィン・ケリーによる技術論。生物の「進化」に基づいて、あらためて「技術とは何か?」を問い直そうという壮大な試みです。ブラックモアの『ミーム・マシーンとしての私』が『利己的な遺伝子』の系譜だとすると、この『テクニウム』は『延長された表現型』の子孫ともいえそう。

テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?

テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?

■『アメリカ大都市の死と生』ジェイン・ジェイコブス
 「今年の3冊」にはなるべく新刊を入れるように意識しているのですが、これはどうしても入れてしまいました。都市の権威者によるマスタープランが、実はただのマスターベーションに過ぎないというボトムからの告発。都市論として秀逸なことはいまさらぼくが紹介する必要もありませんが、本書はジェイコブスの舌鋒鋭い語り口がもうひとつの魅力だと思います。彼女にかかると、コルビジエも「中二病」に見えてくるw

アメリカ大都市の死と生

アメリカ大都市の死と生


以上、こうやって書き出してみると後半からノンフィクションの割合が増えてきていますね。毎年恒例の年末のミステリ・ランキングのフォローもやってないし・・・まあ、そんなこと気にしないで、来年も読みたいときに読みたい本を読んでいこうと思います。楽しいのが一番。

※過去の三冊はこちらでご紹介しています。 2013年。 2012年。 2011年。

ホラーリーグ・シーズン7(死地)!死地を乗り越え、終わりの始まり

これまでも大変でしたが、今年は成立自体が危ぶまれたホラーリーグ。二人とも人生において、仕事も家庭も責任がどんどん重くなっているのを肌に感じつつ、死ぬような思いでホラーを観た一年でした。13年の折り返しにして、まさに「死地」といえるシーズン7(大げさ)。それでは、エントリー作品と各賞の発表でございます。

□エントリー作品(カッコ内の数字は全シーズン通算本数)
01(079) 「V/H/S ネクストレベル」@ヒューマントラストシネマ渋谷
02(080) 「エウロパ@ヒューマントラストシネマ渋谷
03(081) 「悪魔の起源 ジン」@ヒューマントラストシネマ渋谷
04(082) 「パラノーマル・アクティビティ 呪いの印」@TOHOシネマズ日劇
05(083) 「死霊館」@DVD鑑賞
06(084) 「ザ・ベイ」@シネマカリテ
07(085) 「呪怨 終わりの始まり」@チネチッタ川崎
08(086) 「エスケイプ・フロム・トゥモロー」@TOHOシネマズ日劇
09(087) 「NY心霊捜査官」@新宿ピカデリー
10(088) 「寄生獣」@品川プリンスシネマ
11(089) 「インシディアス第2章」@DVD鑑賞
12(090) 「MAMA」@DVD鑑賞
13(091) 「チェインド」@DVD鑑賞


■最恐作品賞: 「チェインド」(監督:ジェニファー・リンチ
 一見のどかなアメリカの田舎の風景に潜む、人間の狂気と邪悪さ。シーズン3で作品賞を戴冠した「サベイランス」に通じるテーマで、見事にジェニファー・リンチ作品が二度目の受賞です。年末ぎりぎりにDVD鑑賞したのですが、この作品を選んで良かった(と言っても、万人にお勧めできる作品ではありませんが)。9歳のときに見知らぬ男に誘拐され監禁された少年。成人するまで鎖に繋がれた彼が、逃亡の果てに知る真実とは・・・タイトルの意味も含めて恐怖がじわりじわりと迫ってきます。過去の作品賞をふりかえってみると、「THEM(ゼム)」、「サベイランス」など、ぼくら意外とこの手の作品(イヤミスならぬイヤホラー)が好みなのかもなあ。


■最恐監督賞: ジェームズ・ワン(「死霊館」、「インシディアス第2章」)
 満を持してジェームズ・ワンが監督賞を受賞です。ジェニファー・リンチとどちらにするか悩んだのですが、「死霊館」といい、「インシディアス第2章」といい、正直、脚本的には決して突出したところのない作品を、あれだけ「ワー!」「キャー!」と恐がれる作品に仕上げた手腕はさすがですね。ジェームズ・ワンの描く幽霊って、体重を感じさせるんですよね。CGみたいなフワフワ感がないの。「SAW」の最後にむくりと立ち上がる、あの死体のイメージね。そんかことありません?いやあ、いずれにしても来年は「死霊館」の姉妹編「アナベル」も上映するみたいですし、「インシディアス第三章」もくるみたい。「チェインド」は万人向けじゃありませんが、ホラーでキャーキャー発散したい人は、ぜひ「インシディアス」観てください、おすすめ!


■最恐脚本賞: バーバラ&アンディ・ムスキエティ(「MAMA」)
 ギレルモ・デル・トロ制作の「MAMA」。デル・トロ系のホラーといえば、「デビルズ・バックボーン」、「パンズ・ラビリンス」、「ダーク・フェアリー」など。いずれも愛情を渇望する少年少女がその満たされない空虚を埋めるために想像世界を作り出し、それが異世界と繋がってしまうというテーマが通底します。この「MAMA」も、やはりその系譜に連なる作品でした。恐怖に震える前半と、哀しさが胸をうつクライマックス。そんなメロウな脚本を評価して脚本賞アンディ・ムスキエティ(監督兼)とお姉さんバーバラの姉弟コンビに。


■最恐撮影賞: (「エスケイプ・フロム・トゥモロー」)
 作品の大半をキヤノンの一眼レフD5 Mark2で撮影、しかも舞台となるディズニーワールドに許可を取らず盗撮したという曰く付きの作品「エスケイプ・フロム・トゥモロー」。家族づれでディズニーリゾートを訪れた男が、夢と現実の間隙に迷い込み、悪夢の世界から逃れられなくなる恐怖をモノクロの美しい映像で描きました。キヤノン関係者のアキラ審査員一押しの映像美!


■最恐音響賞: クライマックス・ゴールデン・ツインズ(「チェインド」)
 クライマックス・ゴールデン・ツインズ??と思って調べてみました。すごい納得。日常的な音の風景に侵入してくる、ざらざらと神経を逆撫でする音響が絶妙。エンドロールの背景に流れる音は、観る(聴く)者の想像力を刺激して、さらなる衝撃と絶望を与えてくれます。


■最恐主演女優賞: なし
 これまで作品賞と監督賞が不在だった年はありましたが、よもや主演女優がいないとは!?ホラー映画といえば、絶叫している美女がいてはじめて成立するジャンルといっても過言ではない!しかし、今年は記憶に残っている主演女優がいないんだよなあ・・・「アンダー・ザ・スキン」を観れていたらスカヨハが候補になっていたかもなあ・・・残念!


■最恐主演男優賞: エリック・バナ(「NY心霊捜査官」)
 主演男優は、「NY 心霊捜査官」のエリック・バナと「寄生獣」の染谷将太の一騎打ち。最後の決め手はやはりぼくらの「共感」でしょうか。仕事で壁にぶつかって家族を放置気味、挙げ句の果てに子どもに八つ当たりして奥さんと激しい夫婦喧嘩!・・・何このリアリティ、他人事とは思えません(苦笑)。というわけで、右腕を謎の寄生生物に乗っ取られた高校生をおさえ、怪異に追い詰められる苦悩をリアルな夫婦喧嘩で表現した中年刑事役のエリック・バナに軍配があがりました(「フッテージ」のときのイーサン・ホークとまったく同じ理由)。


■最恐助演女優賞: 橋本愛
 助演女優賞は、ほぼ毎年アキラ審査員の「鶴の一声」で決まります。もはや「アキラ賞」と名前を変えてもいいのでは。今年は、「寄生獣」の橋本愛ちゃん。ぼくも大好きな女優さんなので、何の異存もなく決定。よく考えたら、橋本愛ちゃんは「アナザー」とか「貞子3D」とかホラー系への出演が多いですよね。若いのに陰がある感じがはまるんだろうなあ。この先も、日本のホラークイーンとして活躍してほしい逸材です。ホラーリーグは、(勝手に)橋本愛ちゃんを応援しています!


■最恐助演男優賞: ヴィンセント・ドンフリオ(「チェインド」)
 「チェインド」で少年を監禁する連続殺人鬼を演じたヴィンセント・ドンフリオ。父リンチが描く強烈なキャラクター(デニス・ホッパーとか、ニコラス・ケイジとか)とは一線を画す演出の娘リンチ。地に足の着いた(?)狂いぶりを評価しました。止むに止まれぬ暴力の衝動と、その衝動に苦しみ続けてきた男の一生。その機微を表現するドンフリオの演技があったからこそ、一人の怪物の所業として完結しない「チェインド」の真のメッセージが伝わってくるんだろうなあ。


以上、どうにかこうにか折り返して「終わりの始まり」 に突入したホラーリーグでした!来年(シーズン8)もスケジュール的に厳しい一年になりそうですが、ときには見逃しちゃった作品(「アンダー・ザ・スキン」、「ザ・ゲスト」などなど)のDVD鑑賞も織り交ぜつつ、なんとか乗り切りたいと思います〜

軸褒め

「一目上がり」の続きです。紹介した動画では「九(句)」まで目が上がっていましたが、寄席なんかでは「七」でサゲることが多いみたい。「七」は七福神で縁起がいいし、「九」まで演るとちょっと冗漫だから、なんて言われているそうです。だから「九」まで演るときは「一目上がり」じゃなくて、「軸褒め」って別の呼び方があるんだとか。まあ、そんな蘊蓄はおいといて、「八」と「九」の紹介です。


■『回想のビュイック8』スティーヴン・キング

 「階層」から「回想」への一目上がり。おまけに「スタートレック」のトリブル繋がりという、ささやかな奇跡までついてきた。ああ、誰かとこの感動を分かち合いたいわ・・・
 

 
 『アンダー・ザ・ドーム』では個性的なキャラクター造形を、『11/22/63』では力づよく感動的な物語を堪能させてくれたキングですが、この『回想のビュイック8』は、さしづめキングの「語り口」を味わえる一冊といえるかもしれません。

 警察署が押収した不気味な車を縦糸に、その車に魅せられた親子と彼らをとりまく警官仲間の絆を横糸に、田舎町の日常が織りあげられていく・・・舞台もほとんど移動せず、際立った登場人物もいない、劇的な事件もほとんど起こらない・・・

 映画にたとえると俳優(キャラクター)に頼るのでもなく、脚本(プロット)に頼るのでもなく、監督の演出力が試される作品ってあるじゃないですか。スピルバーグでいえば、「カラー・パープル」とか「太陽の帝国」とか「戦火の馬」とか。プロモーションにはちょっと苦労するけど、作家の地力が確認できるような作品。

 この『回想のビュイック8』もそんな作品だと思います。『アトランティスのこころ』にも通じるけど、冗漫さも含めて本当に好き。長らく積んだままの『リーシーの物語』も同じ匂いがするんだけど、きっと「文庫化」の告知をみてあわてて読むんだろうなあ(笑
 

回想のビュイック8〈上〉 (新潮文庫)

回想のビュイック8〈上〉 (新潮文庫)

回想のビュイック8〈下〉 (新潮文庫)

回想のビュイック8〈下〉 (新潮文庫)

 
 
■『モンド9』ダリオ・トナーニ

 「モンド9(ノーヴェ)」という架空の世界を舞台にした連作中編集。主人公は、モンド9を覆う広大な砂漠を航行するために作り出されたロブレドという巨大船です(乗組員や密航者といった登場人物は、この巨大船や世界を語るための狂言回しという趣)。外部の材料(ときには乗組員さえ!)を摂取し、分解し、自らの血肉(オイルと金属)として生き延びていく様はまるで生物。そう、「生きた車」からの一目上がりは「生きた船」というわけです。

 水上をいく船のプロペラに相当する継手タイヤは船本体よりも自らの生存を優先するプログラムで行動し、ときに宿主(?)のロブレドを見捨てて逃げ去っていく・・・ロブレドに巣食う機械鳥は外部から資源を調達しては卵を産み、卵から孵った幼鳥は、ロブレドの部品として自らが補充されるべく箇所に収まる・・・もはや生物というよりも、小さな生態系といったほうがいいかもしれません。
 
 解説によると、著者は「モンド9」を舞台にした作品を本書収録作以外にもいくつか発表しているようですね。今後、プリーストの「夢幻諸島」シリーズよろしく、この悪夢のような世界(モンド)の生態系が広がっていくのかと思うと楽しみです。
 

モンド9 (モンドノーヴェ)

モンド9 (モンドノーヴェ)

 
 
 そういえば、「八」と「九」でむかしこんな日記書いていました。

終わりの始まり

友人のマツモト君と始めたホラーリーグ。年間13本のホラー映画を13年間観るだけというシンプルな企画も、なんと今年で7シーズン目。いよいよ折り返し地点までやってきました(169本中の85本目)。そんなポイント・オブ・ノー・リターンな記念の一本となったのは「呪怨」のリブート作品。副題が「終わりの始まり」っていうんだから、折り返しにピッタリすぎてちょっと恐いよ(苦笑)
 

 
 
この6年半のあいだにうちは次男と三男が誕生し、マツモト君は結婚と第一子誕生。いろいろあるのに、よく続くなあ。というわけで、このあたりで前半戦をふりかえり、後半戦へ向けて気合をいれるべく日記に残しておきたいと思います!

■シーズン1(2008年)
 01(001) 「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」@新宿バルト9
 02(002) 「THEM」@シネセゾン渋谷
 03(003) 「28週後・・・」@シアターN渋谷
 04(004) 「シスターズ」@シアターN渋谷
 05(005) 「アメリカン・ホーンティング」@シアターN渋谷
 06(006) 「クローバー・フィールド」@TOHOシネマズ渋谷
 07(007) 「ミスト」@?
 08(008) 「ハプニング」@?
 09(009) 「今日も僕は殺される」@銀座シネパトス
 10(010) 「1408号室」@上野東急
 11(011) 「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」@銀座シネパトス
 12(012) 「ブロークン」@高島屋テアトルタイムズスクエア
 13(013) 「ミラーズ」 @TOHOシネマズ有楽座

■シーズン2(2009年)
 01(014) 「13日の金曜日」@新宿ピカデリー
 02(015) 「ストレンジャーズ/戦慄の訪問者」@シアターN渋谷
 03(016) 「テラートレイン」@銀座シネパトス
 04(017) 「サスペリア・テルザ」@シアターN渋谷
 05(018) 「アルマズ・プロジェクト」@シアターN渋谷
 06(019) 「マーターズ」@シアターN渋谷
 07(020) 「ファイナル・デッドサーキット」@シネマサンシャイン池袋
 08(021) 「REC2」@シネマサンシャイン池袋
 09(022) 「スペル」@シネマサンシャイン池袋
 10(023) 「実験室KR−13」@シアターN渋谷
 11(024) 「ビッグ・バグズ・パニック」@銀座シネパトス
 12(025) 「30デイズ・ナイト」@新橋文化
 13(026) 「フォース・カインド」@品川プリンスシネマ

■シーズン3(2010年)
 01(027) 「パラノーマル・アクティビティ」@TOHOシネマズ日劇
 02(028) 「サベイランス」@シアターN渋谷
 03(029) 「渇き」@ヒューマントラストシネマ有楽町
 04(030) 「シェルター」@新宿バルト9
 05(031) 「ウルフマン」@お台場メディアージュ
 06(032) 「サバイバル・オブ・ザ・デッド」@シネマサンシャイン池袋
 07(033) 「エルム街の悪夢」@新宿ピカデリー
 08(034) 「フローズン」@シネクイント
 09(035) 「怪談新耳袋 怪奇」@シアターN渋谷
 10(036) 「パンドラム」@新宿武蔵野館
 11(037) 「クレイジーズ」@シネマサンシャイン池袋
 12(038) 「白いリボン」@テアトルシネマ銀座
 13(039) 「デイブレイカー」@新宿バルト9

■シーズン4(2011年)
 01(040) 「スプライス」@新宿バルト9
 02(041) 「ザ・ライト」@お台場シネマメディアージュ
 03(042) 「共喰山」@シアターN渋谷
 04(043) 「ロスト・アイズ」@ヒューマントラストシネマ渋谷
 05(044) 「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」@銀座シネパトス
 06(045) 「デビル」@TOHOシネマズ日劇
 07(046) 「モールス」@お台場シネマメディアージュ
 08(047) 「インシディアス」@お台場シネマメディアージュ
 09(048) 「ピラニア3D」@お台場シネマメディアージュ
 10(049) 「ザ・ウォード 監禁病棟」@シネパトス銀座
 11(050) 「スピーク」@お台場シネマメディアージュ
 12(051) 「スクリーム4」@109シネマズ川崎
 13(052) 「パラノーマル・アクティビティ3」@お台場シネマメディアージュ

■シーズン5(2012年)
 01(053) 「ダーク・フェアリー」@シネマサンシャイン池袋
 02(054) 「テイク・シェルター」@銀座テアトルシネマ
 03(055) 「アポロ18」@新宿武蔵野館
 04(056) 「REC/レック3 ジェネシス@ヒューマントラストシネマ渋谷
 05(057) 「トロール・ハンター」@新橋文化
 06(058) 「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」@TOHOシネマズ日劇
 07(059) 「画皮 あやかしの恋」@有楽町スバル座
 08(060) 「プロメテウス」@品川プリンスシネマ
 09(061) 「リヴィッド」@シアターN渋谷
 10(062) 「リンカーン/秘密の書」@品川プリンスシネマ
 11(063) 「パラノーマル・アクティビティ4」@シネマサンシャイン池袋
 12(064) 「ドリーム・ハウス」@TOHOシネマズ川崎
 13(065) 「ウーマン・イン・ブラック」@シネチッタ川崎

■シーズン6(2013年)
 01(066) 「サイレント・ハウス@ヒューマントラストシネマ渋谷
 02(067) 「キャビン」@チネチッタ川崎
 03(068) 「死霊のはらわた」@109シネマズ
 04(069) 「フッテージ@ヒューマントラストシネマ渋谷
 05(070) 「ポゼッション」@シネマサンシャイン池袋
 06(071) 「ABC・オブ・デス」@新宿武蔵野館
 07(072) 「ディアトロフ・インシデント」@ヒューマントラストシネマ渋谷
 08(073) 「ワールド・ウォーZ」@109シネマズ川崎
 09(074) 「ロード・オブ・セイラム」@ヒューマントラストシネマ渋谷
 10(075) 「キャリー」@新宿ピカデリー
 11(076) 「サプライズ」@シネマカリテ
 12(077) 「ビューティフル・ダイ」@ヒューマントラストシネマ渋谷
 13(078) 「V/H/S シンドローム」@DVD鑑賞

■シーズン7(2014年)
 01(079) 「V/H/S ネクストレベル」@ヒューマントラストシネマ渋谷
 02(080) 「エウロパ@ヒューマントラストシネマ渋谷
 03(081) 「悪魔の起源 ジン」@ヒューマントラストシネマ渋谷
 04(082) 「パラノーマル・アクティビティ 呪いの印」@TOHOシネマズ日劇
 05(083) 「死霊館」@DVD鑑賞
 06(084) 「ザ・ベイ」@シネマカリテ
 07(085) 「呪怨 終わりの始まり」@チネチッタ川崎
 
 
後半戦の第一弾は、「エスケープ・フロム・トゥモロー」の予定です。
 

 
 
※シーズン13が終了するのは2020年の予定です。東京オリンピックよりも重要だよ!

一目上がり

どうも年末にランキング風日記を書き終えると、その後、すっかり気が抜けちゃうというのが僕のパターンのようです。ほとんど半年ぶりですが、久しぶりにゆる〜い「読書企画」を思いついたので日記に残しておこうと思います。

落語の前座噺に「一目上がり」ってのがあるんですが、それに想を得た企画です。ちょうど「えほん寄席」(Eテレ)の動画があったので、興味ある人はチェックしてみてください。これ聴いて、本のリストを見れば、わざわざ企画主旨を説明する必要もないですね。読書×落語、趣味の掛け算。



■『第三の警官』フラン・オブライエン

 金目当てで老人を殺害した主人公が迷い込んだのは、怪しい警官や自転車人間が跋扈する世界。同じアイルランド人作家ベケットの戯曲『ゴドーを待ちながら』にも通じる不条理な物語が展開します。「ゴドー」といえば仏教の地獄観に「六道」ってありますけど、この『第三の警官』は「警官道」か「自転車道」とでもいうような奇妙な地獄に堕ちた亡者の話とも解釈できそう(←語感だけのこじつけ)。あるいは主人公を「ワキ」、警官たちを「シテ」と読めば能の世界にも通じるんじゃ・・・なんて連想も(←能なんて観たことない)。

 「不条理」とか「地獄」とかシリアスなこと書きましたけど、読み心地はむしろ軽妙です。ブラック・ユーモア。いや、ブラックよりもっと濃いよなあ。エスプレッソ?そうか、ウイスキー入りのアイリッシュ・コーヒーだな、これは。調子にのって、飲み慣れないものをガブガブやってたら悪酔いしちゃいました。
 

第三の警官 (白水Uブックス/海外小説 永遠の本棚)

第三の警官 (白水Uブックス/海外小説 永遠の本棚)


■『第四の館』R・A・ラファティ

 オブライエンで悪酔いしたっていうのに完全に迎え酒モードで、またもやアイリッシュ系作家のラファティへ。1960年代のアメリカを舞台に、現実と妄想を行ったりきたりの『第四の館』。なんだかピンチョンの『競売ナンバー49の叫び』を思い出して、終始ニヤニヤしながら読んでいました。

 (あくまで個人の感想なんですが)『第四の館』と『競売ナンバー49の叫び』って、どこが似てるのかな。もしかすると両作品とも「網/ネットワーク」という新しい技術、それが孕む新しい権力っていうテーマが通底しいるのかもしれないなあ。1963年発表の『競売ナンバー49の叫び』(カリフォルニア三部作の第一作)は全米に広がる電話線「網」にこだまする幽霊の声で幕を開ける。そして、1970年を舞台にした『LAヴァイス』(カリフォルニア三部作の第三作)はインターネットの前身であるARPANETで幕を閉じる・・・
 
 1960年代を通じて「ネットワーク的なもの」に対する不安の高まりがあったんじゃないだろうか。顔の見える権力から、顔の見えない権力へ移行する時代の無意識とでもいったものが。『第四の館』が1969年発表だから、時代は重なるんですよね。そう考えると、ケネディ暗殺までも繋がってくるんじゃ・・・なんて妄想が次から次へとわきあがってくるんだから、やっぱり『第四の館』は強力なパラノイア小説ですよね。こりゃ、完全に二日酔いだわ。
 


■『ケルベロス第五の首』ジーン・ウルフ

 「次の館はふたたび最初に戻るのだろうか?それとも第五の館だろうか?」という『第四の館』エンディングから、「おそらくこの像のせいで、わたしたちの館は「犬の館」と呼び習わされるようになったのだろう」という『ケルベロス第五の首』へのリレー、完璧だ。ときどきこういう偶然が起こるから、企画読書は面白いんだよな。

 物語の舞台となる「犬の館」は、地球の殖民星(かつては流刑地だった?)にある高級娼館。その経営者の子どもである「わたし」による回想として語られる第一部は、クローンがテーマとなっています。「生殖なき性交」の館(娼館)、その裏で執り行われる「性交なき生殖」の儀式(クローニング)。本書には、そんな鏡像的なモチーフや仕掛けがいたるところに隠されており、読むほどにそれらの仕掛けが発動し、物語に絡みとられていくような感覚を味わいます。

 さらに第二部、第三部と進み、人間の植民以前の原住民=アボ(他者を完全にコピーする能力をもつ異星人)が登場するにいたり、物語はいっそう混迷の度合いを深めていき・・・。語り手はいつしか騙り手となり、物語はいくつもの解釈の可能性に分岐していく。あたかも、複数の頭を持つ地獄の番犬のように。
  

ケルベロス第五の首 (未来の文学)

ケルベロス第五の首 (未来の文学)


■『NOS4A2』ジョー・ヒル

 タイトルの読み方は「ノスフェラトゥ」だそうです。そう、この『NOS4A2』は、ホラー界の王子ジョー・ヒルが満を持して放つ吸血鬼小説なのです(ヒルって名前だけでも、お父さん以上に血を吸いそうですもんねw)。『ケルベロス第五の首』の舞台だった「犬の館」(住所:サルタンバンク通り666番地!)から「吸血鬼」ってリレーもなかなかいい。
 
 そんな期待を知ってか(←知るわけない)、キング・ファンなら思わすニヤリとしてしまう「くすぐり」がてんこ盛りの本書。しかも後半は、ボストン・テランを髣髴とさせるエモな復讐譚という展開もたまんない。もう、このお得感は「神は銀の銃弾」とでも呼びたくなるレベルです。

 『ケルベロス第五の首』で「父殺し」の迷宮をさんざんさまよった後だけに、この屈託ない父子ツーリングは気持ちいいなあ。ハイヨー、シルヴァー!
 

NOS4A2-ノスフェラトゥ- (上) (小学館文庫)

NOS4A2-ノスフェラトゥ- (上) (小学館文庫)

NOS4A2-ノスフェラトゥ- (下) (小学館文庫)

NOS4A2-ノスフェラトゥ- (下) (小学館文庫)


■『第七階層からの眺め』ケヴィン・ブロックマイヤー

 ケヴィン・ブロックマイヤーは、ジョー・ヒルと同じく1972年生まれ。そして、ぼく(1973年3月生まれ)も同級生。とくに意味はありませんが、そういう偶然も大切にしたい41歳。
 
 バラエティに富んでいながら、通読すると、ある種の「静けさ」が際立ってくる、そんな短編集でした。いろいろな音の描写の合間に訪れる静寂。その静寂が、それぞれの主人公が裡に抱える孤独とも通じているようで、思わず耳をすませてしまう・・・。「サイレンス・フィクション」、そんなふうに呼んでみたくなる一冊です。
 

第七階層からの眺め

第七階層からの眺め

 
 
 「七」の続きはこちら「軸褒め」でどうぞ〜