ホラーリーグ・シーズン7(死地)!死地を乗り越え、終わりの始まり

これまでも大変でしたが、今年は成立自体が危ぶまれたホラーリーグ。二人とも人生において、仕事も家庭も責任がどんどん重くなっているのを肌に感じつつ、死ぬような思いでホラーを観た一年でした。13年の折り返しにして、まさに「死地」といえるシーズン7(大げさ)。それでは、エントリー作品と各賞の発表でございます。

□エントリー作品(カッコ内の数字は全シーズン通算本数)
01(079) 「V/H/S ネクストレベル」@ヒューマントラストシネマ渋谷
02(080) 「エウロパ@ヒューマントラストシネマ渋谷
03(081) 「悪魔の起源 ジン」@ヒューマントラストシネマ渋谷
04(082) 「パラノーマル・アクティビティ 呪いの印」@TOHOシネマズ日劇
05(083) 「死霊館」@DVD鑑賞
06(084) 「ザ・ベイ」@シネマカリテ
07(085) 「呪怨 終わりの始まり」@チネチッタ川崎
08(086) 「エスケイプ・フロム・トゥモロー」@TOHOシネマズ日劇
09(087) 「NY心霊捜査官」@新宿ピカデリー
10(088) 「寄生獣」@品川プリンスシネマ
11(089) 「インシディアス第2章」@DVD鑑賞
12(090) 「MAMA」@DVD鑑賞
13(091) 「チェインド」@DVD鑑賞


■最恐作品賞: 「チェインド」(監督:ジェニファー・リンチ
 一見のどかなアメリカの田舎の風景に潜む、人間の狂気と邪悪さ。シーズン3で作品賞を戴冠した「サベイランス」に通じるテーマで、見事にジェニファー・リンチ作品が二度目の受賞です。年末ぎりぎりにDVD鑑賞したのですが、この作品を選んで良かった(と言っても、万人にお勧めできる作品ではありませんが)。9歳のときに見知らぬ男に誘拐され監禁された少年。成人するまで鎖に繋がれた彼が、逃亡の果てに知る真実とは・・・タイトルの意味も含めて恐怖がじわりじわりと迫ってきます。過去の作品賞をふりかえってみると、「THEM(ゼム)」、「サベイランス」など、ぼくら意外とこの手の作品(イヤミスならぬイヤホラー)が好みなのかもなあ。


■最恐監督賞: ジェームズ・ワン(「死霊館」、「インシディアス第2章」)
 満を持してジェームズ・ワンが監督賞を受賞です。ジェニファー・リンチとどちらにするか悩んだのですが、「死霊館」といい、「インシディアス第2章」といい、正直、脚本的には決して突出したところのない作品を、あれだけ「ワー!」「キャー!」と恐がれる作品に仕上げた手腕はさすがですね。ジェームズ・ワンの描く幽霊って、体重を感じさせるんですよね。CGみたいなフワフワ感がないの。「SAW」の最後にむくりと立ち上がる、あの死体のイメージね。そんかことありません?いやあ、いずれにしても来年は「死霊館」の姉妹編「アナベル」も上映するみたいですし、「インシディアス第三章」もくるみたい。「チェインド」は万人向けじゃありませんが、ホラーでキャーキャー発散したい人は、ぜひ「インシディアス」観てください、おすすめ!


■最恐脚本賞: バーバラ&アンディ・ムスキエティ(「MAMA」)
 ギレルモ・デル・トロ制作の「MAMA」。デル・トロ系のホラーといえば、「デビルズ・バックボーン」、「パンズ・ラビリンス」、「ダーク・フェアリー」など。いずれも愛情を渇望する少年少女がその満たされない空虚を埋めるために想像世界を作り出し、それが異世界と繋がってしまうというテーマが通底します。この「MAMA」も、やはりその系譜に連なる作品でした。恐怖に震える前半と、哀しさが胸をうつクライマックス。そんなメロウな脚本を評価して脚本賞アンディ・ムスキエティ(監督兼)とお姉さんバーバラの姉弟コンビに。


■最恐撮影賞: (「エスケイプ・フロム・トゥモロー」)
 作品の大半をキヤノンの一眼レフD5 Mark2で撮影、しかも舞台となるディズニーワールドに許可を取らず盗撮したという曰く付きの作品「エスケイプ・フロム・トゥモロー」。家族づれでディズニーリゾートを訪れた男が、夢と現実の間隙に迷い込み、悪夢の世界から逃れられなくなる恐怖をモノクロの美しい映像で描きました。キヤノン関係者のアキラ審査員一押しの映像美!


■最恐音響賞: クライマックス・ゴールデン・ツインズ(「チェインド」)
 クライマックス・ゴールデン・ツインズ??と思って調べてみました。すごい納得。日常的な音の風景に侵入してくる、ざらざらと神経を逆撫でする音響が絶妙。エンドロールの背景に流れる音は、観る(聴く)者の想像力を刺激して、さらなる衝撃と絶望を与えてくれます。


■最恐主演女優賞: なし
 これまで作品賞と監督賞が不在だった年はありましたが、よもや主演女優がいないとは!?ホラー映画といえば、絶叫している美女がいてはじめて成立するジャンルといっても過言ではない!しかし、今年は記憶に残っている主演女優がいないんだよなあ・・・「アンダー・ザ・スキン」を観れていたらスカヨハが候補になっていたかもなあ・・・残念!


■最恐主演男優賞: エリック・バナ(「NY心霊捜査官」)
 主演男優は、「NY 心霊捜査官」のエリック・バナと「寄生獣」の染谷将太の一騎打ち。最後の決め手はやはりぼくらの「共感」でしょうか。仕事で壁にぶつかって家族を放置気味、挙げ句の果てに子どもに八つ当たりして奥さんと激しい夫婦喧嘩!・・・何このリアリティ、他人事とは思えません(苦笑)。というわけで、右腕を謎の寄生生物に乗っ取られた高校生をおさえ、怪異に追い詰められる苦悩をリアルな夫婦喧嘩で表現した中年刑事役のエリック・バナに軍配があがりました(「フッテージ」のときのイーサン・ホークとまったく同じ理由)。


■最恐助演女優賞: 橋本愛
 助演女優賞は、ほぼ毎年アキラ審査員の「鶴の一声」で決まります。もはや「アキラ賞」と名前を変えてもいいのでは。今年は、「寄生獣」の橋本愛ちゃん。ぼくも大好きな女優さんなので、何の異存もなく決定。よく考えたら、橋本愛ちゃんは「アナザー」とか「貞子3D」とかホラー系への出演が多いですよね。若いのに陰がある感じがはまるんだろうなあ。この先も、日本のホラークイーンとして活躍してほしい逸材です。ホラーリーグは、(勝手に)橋本愛ちゃんを応援しています!


■最恐助演男優賞: ヴィンセント・ドンフリオ(「チェインド」)
 「チェインド」で少年を監禁する連続殺人鬼を演じたヴィンセント・ドンフリオ。父リンチが描く強烈なキャラクター(デニス・ホッパーとか、ニコラス・ケイジとか)とは一線を画す演出の娘リンチ。地に足の着いた(?)狂いぶりを評価しました。止むに止まれぬ暴力の衝動と、その衝動に苦しみ続けてきた男の一生。その機微を表現するドンフリオの演技があったからこそ、一人の怪物の所業として完結しない「チェインド」の真のメッセージが伝わってくるんだろうなあ。


以上、どうにかこうにか折り返して「終わりの始まり」 に突入したホラーリーグでした!来年(シーズン8)もスケジュール的に厳しい一年になりそうですが、ときには見逃しちゃった作品(「アンダー・ザ・スキン」、「ザ・ゲスト」などなど)のDVD鑑賞も織り交ぜつつ、なんとか乗り切りたいと思います〜