今年の3冊(2013年)

毎年おなじで芸がありませんが、今年も読んだ本のメモと記憶に残った三冊を。

□今年読んだ本(読んだ順番で)
『ソロモンの偽証』(1・2・3)宮部みゆき
エクソシストウィリアム・ピーター・ブラッティ
『のめりこませる技術』フランク・ローズ
『世界が終わるわけではなく』ケイト・アトキンソン
『沈黙の町で』奥田英朗
『ガール・ジン』アリスン・ピープマイヤー
『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』小宮正安
『ウィルソン氏の驚異の陳列室』ローレンス・ウェシュラー
『カールシュタイン城夜話』フランティシェク・クプカ
『夜毎に石の橋の下で』レオ・ペルッツ
『火葬人』ラジフラフ・フクス
『もうひとつの街』ミハル・アイヴァス
『掏摸』中村文則
『博物館の裏庭で』ケイト・アトキンソン
『コリーニ事件』フェルディナント・フォン・シーラッハ
『闇の奥』辻原登
『空白の五マイル』角幡唯介
『雪男は向こうからやってきた』角幡唯介
『マンガ・ホニャララ』ブルボン小林
『スーパー・ゴッズ』グラント・モリソン
『落語を聴かなくても人生は生きられる』松本尚久・編
『機械男』マックス・バリー
『幸福の遺伝子』リチャード・パワーズ
『ブラック・ホール』チャールズ・バーンズ ※グラフィックノベル
『双眼鏡からの眺め』イーディス・パールマン
『夏 プリズンホテル(1)』浅田次郎
『デッドボール』木内一裕
『HHhH プラハ、1942年』ローラン・ビネ
ヒストリー・オブ・バイオレンス』ジョン・ワグナー、ヴィンス・ロック ※グラフィックノベル
『チャイルド・オブ・ゴッド』コーマック・マッカーシー
『「妻殺し」の夢を見る夫たち』中村靖
ゴーン・ガール』(上・下)ギリアン・フリン
『ミスター・ピーナッツ』アダム・ロス
『1922』スティーヴン・キング
『ビッグ・ドライバー』スティーヴン・キング
『完本 酔郷譚』倉橋由美子
『夢の通い路』倉橋由美子
『状況に埋め込まれた学習』ジーン・レイヴ、エティエンヌ・ウェンガー
『ブロデックの報告書』フィリップ・クローデル
予告された殺人の記録ガルシア・マルケス
『無分別』オラシオ・カステジャーノス・モヤ
『学習のエスノグラフィー』川床靖子
『11/22/63』(上・下)スティーヴン・キング
『IT』(1・2・3・4)スティーヴン・キング
『シャドウ・ストーカー』ジェフリー・ディーヴァー
『エコー・メイカー』リチャード・パワーズ
『リブラ 時の秤』(上・下)ドン・デリーロ
『家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』小野一光
『凶悪 ある死刑囚の告発』「新潮45」編集部
『白酒ひとり 壺中の点』桃月庵白酒
『雲助、悪名一代』五街道雲助
『落語の国の精神分析藤山直樹
宅間守 精神鑑定書』岡江晃
『ジェイコブを守るため』ウィリアム・ランデイ
『遮断地区』ミネット・ウォルターズ
『シスターズ・ブラザーズ』パトリック・デウィット
『終わりの感覚』ジュリアン・バーンズ


【フィクション部門】

■『ブラック・ホール』チャールズ・バーンズ
 小野耕世『世界コミックスの想像力』で紹介されていた伝説のグラフィックノベル、『ブラック・ホール』が待望の邦訳。とにかく画から受けるプレッシャーがすごい。モノクロというよりも、モノ黒とでも呼びたくなります。口腔、性器、傷口、といった穴から闇が滲みだしてくる、いや、闇が湧きだしてくるような描写に圧倒されました。このコーナーは原則、マンガ、グラフィックノベル、ベーデー系を対象から外しているんですが、これは例外です。

ブラック・ホール (ShoPro Books)

ブラック・ホール (ShoPro Books)

■『双眼鏡からの眺め』イーディス・パールマン
 この作品の素晴らしさについてはすでにブログに書きましたが、年末にもう一回プッシュさせてくださいよ。その後、Twitterでもたくさんの絶賛の声を見かけましたが、なかでも「この短編集は一気に読んでしまったらもったいない」という感想が多かったですね。それ、すごくよくわかる!一編読むたびに心中に波紋が広がっていくようで、すぐに次の一編に取りかかれないんですよね。ぼくも通勤の東海道線に揺られながら、上り線で一編、下り線で一編と大切に読んでいました。

双眼鏡からの眺め

双眼鏡からの眺め

■『11/22/63』・『IT』スティーヴン・キング
 『11/22/63』は、見事に年末ミステリ・ランキングの双璧(「週刊文春」と「このミス」)を制しました。2011年の三冊に選んだ前作『アンダー・ザ・ドーム』は、キングのキャラクター造形の力技を実感できる作品でしたが、『11/22/63』はプロットの妙技を堪能できる作品だったんじゃないかと思います。そんなこと考えながら『IT』を再読したんですが、あらためて『IT』はすごいなあ、と。複数のキャラクターが登場する群像劇でありながら、プロットも過去と未来に行ったり来たり。これだけ複雑な構築物にもかかわらず、ほとんど読者にストレスを感じさせることなく物語内を闊歩させる筆力。最近の洗練された作品もいいですが、『IT』の「全部入り」感は本当にすごいですね。

11/22/63 上

11/22/63 上

11/22/63 下

11/22/63 下



【ノンフィクション部門】
今年は小説ばっかり読んでたなあ。というわけで、ノンフィクション部門は一冊のみにしておきます。

■『カール・ジン』アリスン・ピープマイヤー
 フェミニズムの歴史におけるジンの果たした役割を丁寧に追いかけた本でしたが、難しいことは抜きに、とにかく読んでいるとジンを作りたくなってくる一冊でした。ジンは以前から興味があったのですが、レタリングもイラストもできないし、DTPも、ましてや製本なんて・・・となかなか踏み出せずにいました。でもこの本を読んで、語りたいことがあるなら誰でもジンを作ることができる!という勇気をもらえました。今年「MOMOZINE」を作ることができたのは、この本を読んだ影響が大きかったですね。そういう意味で、忘れ得ぬ一冊になりました。

ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア

ガール・ジン 「フェミニズムする」少女たちの参加型メディア


以上、今年は『幸福の遺伝子』の書評を翻訳ミステリシンジケートに掲載していただけたり、なんだか嬉しい一年でした。本当は『エコーメイカー』の感想もブログに書きたかったのですが、間に合わなかったなあ。まあ、いいやww

来年も無理をせず、ぼちぼち楽しい読書をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします〜

※過去の三冊はこちらでご紹介しています。 2012年。 2011年。