ホラーリーグ・シーズン4(死)、結果発表DEATH!

いよいよ今年も残すところあとわずか。mixi時代からお付き合いのある方には恒例ですが、今年も「ホラーリーグ」の結果発表とまいります。「ホラーリーグ」なんていうと大げさですが、その実態は、ホラー映画好きの幼なじみと二人で始めたお遊びで、一年間に13本のホラー映画を観て、「あーでもない、こーでもない」とくっちゃべるだけのことなんです。それでも2008年からスタートして今年で4シーズン目。今年は3月の震災以来しばらく空白期間ができてしまい、13本観るのは無理かなあと半ば諦めかけていたのですが、驚異の追い上げで無事に規定本数に達することができました。そういえば、今年の漢字は「絆」だとか。「ホラーリーグ」は僕と幼なじみの「絆」になっているのかもしれませんねえ。これぞ戦慄の「絆」だ(苦笑

それでは、さっそく13本のエントリー作品の紹介に続いて「最恐」各賞の発表です。

□エントリー作品
01 「スプライス」新宿バルト9
02 「ザ・ライト」@お台場シネマメディアージュ
03 「共喰山」シアターN渋谷
04 「ロスト・アイズ」@ヒューマントラストシネマ渋谷
05 「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」@銀座シネパトス
06 「デビル」@有楽町日劇
07 「モールス」@お台場シネマメディアージュ
08 「インシディアス」@お台場シネマメディアージュ
09 「ピラニア 3D」@お台場シネマメディアージュ
10 「ザ・ウォード 監禁病棟」@シネパトス銀座
11 「スピーク」@お台場シネマメディアージュ
12 「スクリーム4」@109シネマズ川崎
13 「パラノーマル・アクティビティ3」@お台場シネマメディアージュ


■最恐作品賞 : (該当作品なし)
すごく残念です!今年はけっこうバラエティに富んでいて、それなりに記憶に残る作品も多かったのですが、「これは恐かった!!」というインパクトのある作品がなく、こういう結果になってしまいました。審査委員の二人とも最後まで悩んだのですが、来年に期待して、あえて今年は「該当作品なし」とすることにしました(泣

■最恐監督賞 : アレクサンドル・アジャ「ピラニア 3D」
フランス出身のアレクサンドル・アジャ監督が、「ミラーズ」に続いて二本目のエントリーとなる「ピラニア 3D」で見事戴冠です。往年の名作を、のびのびと楽しみにながら再創造している感じがスクリーンから伝わってきましたね。二人のヌードモデルが二匹の人魚のように延々と泳ぎ続けるシーンとか、主人公をいじめてたジョックが突然モーターボートで暴走した挙句、そのスクリューに髪の毛が絡まった女の人の髪の毛が頭皮ごとずる剥けちゃったり。ストーリーとは関係ないのに、妙にインパクトのあるシーンがところどころに散りばめてあるんですよね。しかも、たぶん自身初の3D作品だと思うんですが、まったく3Dじゃなくてもいいんじゃないかと思える薄っぺらさ(いい意味で)!なぜ3Dにしたのか?とあらためて問えば、それはおそらく「ピラニア」ではなくって「おっぱい」を立体で撮りたかっただけなんじゃないでしょうかw

■最恐脚本賞 : クリストファー・B・ランドン(「パラノーマル・アクティビティ3」
まさか過去にさかのぼるとは。この時間的な逆行は意外でした。しかも「3」では、一気に20年以上も過去にさかのぼって1980年代が舞台になっている。そもそもこのシリーズのテーマはカメラ(技術)が「超常現象」をとらえることにあるわけですから、ここまで大胆に時代をさかのぼって大丈夫?と、ちょっと心配になりましたが、どうしてどうして、むしろそのことがこのシリーズの内包する技術史的な側面を強烈にあぶり出したように思います。とくに夫婦が寝室にビデオカメラを持ち込んで、自分たちのセックスを撮ろうとするシーンは秀逸。ハンディカメラの発明がポルノの世界において「ハメ撮り」という表現方法を生んだように、ホラーの世界では「フェイクドキュメント」といわれる表現方法が生まれたわけです。ビデオカメラがどのように人の生活に浸透し、それを変えていったのかという視点でみると、「ビデオドローム」や「セックスと嘘とビデオテープ」にも通じる映画なんじゃないかと・・・

■最恐撮影賞 : タク・フジモト(「デビル」
エレベーターという狭い空間で展開するサスペンスながら、観客を飽きさせない見事なカメラワークに「撮影賞」を贈呈したいと思います。エレベーターに閉じ込められるメンバーが集まってくるオープニングのシーンも良かったなあ。すごく計算されているんだろうけど、それを感じさせない流れるようなカメラワーク。最後にエレベーターに乗り込むカメラが、鏡に映らないというのもなかなか凝った演出ですよね。狭い空間だと通常のショットなのか、それとも誰かの(悪魔の?)主観ショットなのかが曖昧ですごくスリリング。カメラの視点がサスペンスをさらに盛り上げる機能も果たしていました。

■最恐音楽賞 : ジョン・カーペンター「ザ・ウォード 監禁病棟」
今年は、カーペンター監督が久しぶりにホラー映画のメガホンを取ったということで記憶されるシーズンだといってもいいかと思うのですが、あえて我がホラーリーグでは「音楽賞」を贈呈することにしました。カーペンター監督は、これまでも自分の作品のほとんどの音楽を手掛けてきたかと思うのですが、どれも耳に残る印象的なテーマに仕上がっていますね。「ザ・ウォード」もオープニングの映像と音楽が見事に融合していて、これから始まるカーペンター恐怖劇場への期待をいやがうえにも盛り上げていました。映画観終わったあとも、数日間、テーマ曲が頭から離れなくて困りましたね。なんて書いていたら、また甦ってきたよ・・・

■最恐主演女優賞 : アンバー・バード(「ザ・ウォード 監禁病棟」
「ザ・ウォード」からは主演女優も戴冠です。若手の注目株というだけあって、一見強そうでいながらどこか危うげなところのあるヒロインを瑞々しく演じていたと思います。精神科の病棟に収監された女子患者の一人をビンタするシーンでは強烈なエネルギーを放っていて、すごく印象に残りましたね。痛そー!って。誠実さが徐々に狂気に変貌していく過程も自然で、おじさん、すっかり騙されちゃったよw 

■最恐主演男優賞 : アンソニー・ホプキンス「ザ・ライト」
エクソシズムを専門とする個性的な神父の役でしたが、アンソニー・ホプキンスが演じると、ちゃんと「悪魔払い」をやってるのか、はたまたただの精神病の人に「折檻」してるだけなのか区別がつかなくなってきて、見ているこっちがハラハラしちゃう。極めつけは、近づいてきた小さな女の子を振り向き様に、いきなりひっぱたくシーンですよ。おもわず「ひっ」って声が出ちゃった。エクソシズムの映画なのに、悪魔よりも神父がこえー!

■最恐助演女優賞 : 裕木奈江「レイキャヴィク・ホエール・ウォッチング・マサカー」
今年、最初に決まったのがこの助演女優賞でした。というか、この映画を観終わった瞬間から僕らのなかではほぼ決定していたといっても過言ではないですね。それくらい、裕木奈江の「小悪魔ぶり」が遺憾なく発揮された、まさに「はまり役」でした。映画自体は「アイスランド初のスラッシャー」という触れ込みでしたが、このキャスティングをしたアイスランドのスタッフの慧眼は素晴らしい。ぜひ、エンドウ(裕木奈江の役名)を裏の主人公とした続編を作って欲しい。「クヴェラゲルジ・オーロラ・ウォッチング・マサカー」とか。

■最恐助演男優賞 : リチャード・ジェンキンス「モールス」
主人公の吸血鬼少女の父親かと思っていたら実は・・・という設定の役でした。彼の正体がわかったときの切なさといったら。しかも、彼の正体がわかる瞬間というのは、この作品においても重要なターニングポイントになっているんですよね。吸血鬼少女と人間の少年の「小さな恋の物語」に、初めて暗い影がさす瞬間でもあります。不器用で、おそらく周囲からも疎まれていたであろう少年が、さまざまな人生の挫折の末に成り果てたのであろう屈託のある初老の男を鬱々と演じていました(←褒めてるんです)。


こうして振り返ってみると、作品賞が出なかったのは本当に残念でしたが、総じて充実した一年だったと思います。来年はいよいよシーズン5。緒戦は、ギレルモ・デル・トロがプロデュースした「ダーク・フェアリー」あたりになりそうです。3月には日本公開を熱望していた「トロール・ハンター」も控えているし。

あれ?もしかして「妖精ブーム」来てる?