今年もやったぜ、ホラーリーグ・シーズン5!

ご無沙汰しておりました、半年振りの更新です。

幼馴染の相棒アキラ君と、年に13本のホラー映画を観るという自主企画「ホラーリーグ」も今年で5年目を迎えました。二人とも仕事が忙しくなったり、家族が増えたりと、年々遂行するのが困難になりつつあるミッション。コッポラの「ヴァージニア」とか、ロジェの「トールマン」とか、いくつかしくじってしまった作品もあるのですが、どーにかこーにか今年も終えることができましたので、この場をお借りして(勝手に)最恐各賞を発表させていただきたいと思います。お付き合いいただければ幸いです。

□エントリー作品
01 「ダーク・フェアリー」シネマサンシャイン池袋
02 「テイク・シェルター」@銀座テアトルシネマ
03 「アポロ18」新宿武蔵野館
04 「REC/レック3 ジェネシス」@ヒューマントラストシネマ渋谷
05 「トロール・ハンター」@新橋文化
06 「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」@TOHOシネマズ日劇
07 「画皮 あやかしの恋」有楽町スバル座
08 「プロメテウス」品川プリンスシネマ
09 「リヴィッド」@シアターN渋谷
10 「リンカーン/秘密の書」品川プリンスシネマ
11 「パラノーマル・アクティビティ4」シネマサンシャイン池袋
12 「ドリーム・ハウス」@TOHOシネマズ川崎
13 「ウーマン・イン・ブラック」@シネチッタ川崎


■最恐作品賞 : 「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」
 昨年は、残念ながら該当作品のなかった作品賞ですが、今年は「遊星からの物体X ファースト・コンタクト」を満場一致(と言っても二人だけ)で選出しました。製作当初は(二度目の)リメイクと噂された本作でしたが、蓋を開けてみれば、カーペンター版「遊星からの物体X」で少しだけ登場するノルウェーの観測基地を舞台としたプレクェル(前日談)となっていました。ホラー史に名を残す作品のプレクェルであり、しかも監督は本作がデビュー作となる新人。さぞプレッシャーが大きかったと思うのですが、期待以上にバランスの良い秀作に仕上がっていました。決してスケールを広げすぎず、あくまで閉ざされた空間内でのサスペンスに重点を置いたこと、カーペンター版の売りでもあったクリーチャーの生理的な気持ち悪さを踏襲したことなどなど、前作へのリスペクトを感じさせる絶妙なバランスの作品になっています。雪原を走る一匹の犬が、カーペンター版にそのままカットインしていくようなラストもなかなか。

■最恐監督賞 : (該当監督なし)
 昨年は作品賞が「なし」でしたが、今年は監督賞が「なし」となりました。いえ、決してダメ監督ばかりというわけではないのですが、なぜか演出で記憶に残るような映画がなかったというか。。。こんなこと書くと「お前ら何様だ」とお叱りを受けそうですが、まあ素人の遊びですから大目に見てください。

■最恐脚本賞 : デヴィッド・ルーカ(「ドリーム・ハウス」
 「スカイ・フォール」公開の裏でひっそりと公開されていたダニエル・クレイグ主演の「ドリーム・ハウス」。脇を固めるのはレイチェル・ワイズナオミ・ワッツイライアス・コティーズという豪華さ。脚本も俳優陣に負けず劣らずよく練られていて、サイコスリラーとゴーストストーリーを混ぜ合わせて最後は砂糖でコーティングしたような作品に仕上がっていました。こんなふうに書くと複雑な脚本のように思われるかもしれませんが、作品賞の「遊星からの〜」同様、奇をてらわずバランスを重視したストーリーテリングだったと思います。じつは、パスカル・ロジェ監督・脚本の「トールマン」という作品も脚本賞の候補に考えていたのですが、アキラ君が仕事で観られなかったため、残念ながらエントリーから外すことになりました。こちらは、ホラー映画の定石を逆手にとった意外な結末の脚本で、さすが「マーターズ」のパスカル・ロジェと唸らされる一本でした。

■最恐撮影賞 : ティム・モーリス・ジョーンズ(「ウーマン・イン・ブラック」
 干潟に建つ洋館に出没する黒衣の幽霊という「いかにも」な設定だけに、撮り方によっては古臭い映画になってしまったのでしょうが、引き締まった「黒」によるスタイリッシュな映像でうまく回避していました。主人公の背景の陰影に何か見えそうで見えないものが映っているというアングルは、どこかJホラーを髣髴とさせるところがあります。もうひとつ、「ウーマン・イン・ブラック」はロケーションも秀逸でした。夜中に車のヘッドライトを頼りに干潟から遺体を引き上げるシーンなんて、ロケと撮影の相乗効果でとても印象的なショットになっていました。

■最恐視覚効果賞 : 担当者不明(「トロール・ハンター」
 昨年の「レイキャビク・ホエール・ウォッチング・マサカー」のアイスランドに続き、今年も北の国から異色の一本がエントリーしました。絵本「三びきのやぎのがらがらどん」やテーブルトークRPG「トンネルズ&トロールズ」でお馴染みのノルウェーの妖精(妖怪?)トロールを題材にしたモキュメンタリー。そのアイデアだけでも最高なんですけど、この「トロール・ハンター」、視覚表現における潔さがまた絶妙なんですよね。同じく怪獣ものモキュメンタリーである「クローバー・フィールド」が怪獣を見せないことでリアリティを高めていたのとは対照的に、「トロール・ハンター」は映画の序盤からガンガンにトロールを見せびらかすことで作品に強烈な印象を与えることに成功していますね。モキュメンタリーという手法は、リアリティを高める手法であると同時に、チープさを楽しむ(ごまかす?)ための手法でもあるということを再確認できた作品でした。チョキン、パチン、ストン

■最恐主演女優賞 : レティシア・ドレラ(「REC/レック3 ジェネシス」
 「レック3」で、血まみれの花嫁衣裳にチェーンソーという、笑っちゃうくらいアイコニックなヒロインを演じたレティシア・ドレラ。「レック3」は、序盤でそれまでのモキュメンタリー・スタイルをかなぐり捨てるという劇的な展開をみせるわけですが、いま考えると、映画の激変と主人公の花嫁の激変がシンクロしていたんですね。それまでの「レック」シリーズの遺産を、清々しいほどの勢いで破壊していくニューヒロインにブルース・キャンベルの姿が重なって見えました。天晴れ。

■最恐主演男優賞 : マイケル・シャノン「テイク・シェルター」
 主演女優賞のレティシア・ドレラを「動」とするなら、マイケル・シャノンは完全に「静」のイメージ。自らの裡にある狂気と現実の脅威の区別が少しずつ崩壊していく男の恐怖を、抑えた演技で淡々と演じきりました。脚本も(視覚的な)演出も地味な分、主演のマイケル・シャノンをはじめとする俳優陣の演技が作品を支えていました(妻役のジェシカ・チャステインも良かった)。3.11以降、「フクシマダイイチ」という目に見えない破滅を日常として生きる僕たちにとって、「テイク・シェルター」の主人公カーティスを侵した恐怖はけっして他人事ではないのかもしれません。

■最恐助演女優賞 : ヴィッキー・チャオ「画皮 あやかしの恋」
 昨年の裕木奈江に続いて、二年連続でアジア系女優さんが戴冠です。「少林サッカー」や「レッド・クリフ」にも出演し、いまやアジアを代表する女優さんですね。「画皮」では、妖艶な狐の妖魔に亭主を寝取られる貞淑な人妻役を演じていましたが、これが「少林サッカー」で饅頭を捏ねていた冴えない女の子と同じ女優さんか!?と思うような色気が滲み出ていました。「画皮」は、妖魔を演じたジョウ・シュンと、このヴィッキー・チャオという二人のタイプの違う美人を楽しむ映画でしたね。あえてヴィッキー・チャオに賞を出したのはアキラ君の趣味です。僕は、個人的には、男勝りのモンスター・ハンターを演じたスン・リーのほうが好みだったんだけどなあ・・・(←どうでもいい)

■最恐助演男優賞 : マイケル・ファスベンダー「プロメテウス」
 「エイリアン」のプレクェルである「プロメテウス」でアンドロイドを演じたマイケル・ファスベンダー。「エイリアン」でイアン・ホルムが演じたアンドロイドの系譜を見事に引き継ぎ、無機的でありながらも謎を秘めた演技でサスペンスを高めていました。お約束の「白い血」を撒き散らすシーンも「エイリアン」ファンにはたまならいですよね。マイケル・ファスベンダーの端整な顔立ちはアンドロイドには嵌りすぎって感じもして、「A.I.」のジュード・ロウと並べてみたくなりました。

■最恐特別賞 : シアターN渋谷
 今年はシアターN渋谷が12月に閉館しました。B級、C級のホラー映画のメッカとして、わがホラー・リーグでも何度もお世話になった映画館。7年間という短い期間ではありましたが、本当にお世話になりました。謹んで特別賞を捧げたいと思います。来年には、シネマパトス銀座も閉館することのこと。この二館が閉館させれてしまうと、B級、C級のホラー映画はますます日本で公開されなくなってしまうのでは、と心配しています。閉館されたはずなのに、なぜか夜中だけホラーがかかっている。そんなリビングデッド・シアターとして、復活してくれないでしょうか・・・


さて、来年はいよいよシーズン6。一月には相棒のアキラ君に待望の第一子が誕生し、僕は僕で夏に資格試験なぞに挑戦しようという予定もあり、果たして13本ものホラー映画を観ることができるのか・・・早くも自信がありません!